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むんと胸を張れること

富だとか名声だとか、いわゆるステイタスと呼ばれるものがある。私はその類への意欲(自己実現欲求とでもいうのかな)が割に低い。誰からも必要とされるひとよりは、自分の好きだと思う少ない数のひとたちから「オモチロイやつだな」と思われるひとになりたい。なんだか負け惜しみみたく聞こえるかも知れないけれど。

 

そんな私でも、憧れたものがひとつだけあった。小学生の時分、私はバスケットボールを習っていて、試合のため遠征に行くことが割に多かった。さて憧れたものは何だったかと問われると、ユニフォームに刺繍された「県名」であった。例えば東京都代表であれば「TOKIO」と、福岡代表であれば「FUKUOKA」という刺繍が背番号の上に入っており、それがたまらなくかっこよかった。

 

しかしその刺繍は各チームの自由意志によって入れられるシロモノではなく、県大会を勝ち抜き、県代表となったチームのみ入れることを許されていた。つまりこの刺繍は「ワタクシたちは全国大会に出場しました」ということを示唆しており、それゆえただならぬ威圧感があった。心なしか選手たちもむんと胸を張っているように見えた。

 

私の所属していたバスケットチームはよくある弱小チームであり、ついぞ刺繍を入れることの叶わなかった。後にも先にもステイタスへの憧憬は、「背番号の上の刺繍」これだけである気がする。